トゥルーバイパスのスイッチングノイズ調査
2026年06月13日 カテゴリー:実験等
※ スイッチングノイズは毎回大きさが変わり、個体差もあります。本記事のデータは参考程度にとどめてください。
■ 分解
トゥルーバイパスに欠かせない3PDTのスイッチです。内部のパーツがシーソーのように動くことによって接点が切り替わります。
■ スイッチングノイズ測定回路
今回準備したスイッチングノイズ測定用のバッファー回路です。一般的なエフェクターの入力部を想定しています。
前段の出力インピーダンス(R0)と後段の入力インピーダンス(R1、R2)の影響を調べました(+40dB、拡大後の図)。
R0 = 500kΩ(中段)では周囲のノイズやケースの振動を拾っています。ギターを直接接続したときには、ケースの振動がノイズとして現れる可能性があります。
R1 = R2 = 100kΩ(下段)だとノイズレベルが小さくなっています。スイッチの後段に低入力インピーダンスのバッファーを入れるのはスイッチングノイズ低減に有効だとわかりました。
約0.1Vrmsの正弦波(500Hz)を入力している状態でのスイッチングノイズです。
波形が一瞬途切れる形になります。ノイズが大きくなる現象は見られませんでした。
■ スイッチ比較
5種類のスイッチを準備しました。
| メーカー | 型番 | 価格 | 作動力 | 機械的寿命 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| TAIWAN ALPHA | SF17020F-0302-21R-L | $3.69 | 3.0±0.8kgf | 30000回 | 最も信頼度が高いとされている |
| Tayda Electronics | SF17N-0302-21R-L-1.1KG-R | $2.30 | 1.1±0.3kgf | 30000回 | 1個売りで最安値 |
| DAILYWELL ELECTRONICS | FK3LP20B2C3M1QES | $2.99 | 3.0±0.8kgf | 30000回 | 秋月電子で販売されているものとおそらく同一(型番が一致) |
| Daier Electron | PBS-24-302 | $1.60※ | 約1.1kgf(実測) | 30000回? | ※50個購入時の1個当たりの価格 |
| 台湾製? | SF12N-0302-20R-LD-1.5KG | $2.70 | 1.6±0.5kgf | 10000回 | ミニサイズ |
各スイッチ3回路分のスイッチングノイズをそれぞれ40回測定し、最もレベルが大きかったものを掲載しています。
Miniタイプはややノイズが大きく、DAILYWELL製はさらに大きい傾向がありました。ALPHA製はノイズが小さい傾向があったものの、個体差があるため確実に低ノイズを期待できるわけではありません。
■ プルダウン抵抗の効果
トゥルーバイパス方式のほとんどのエフェクターでは、プルダウン抵抗と呼ばれるR1が入っています。これは、入力のコンデンサのリーク電流を通して現れる小さな電圧を、0V(グラウンド)に落とすための抵抗とされています(→ AMZ-FX Guitar Effects Blog Pulldown Resistors)。この抵抗にスイッチングノイズ低減効果があるのか確認します。
前述の通り、スイッチ直後の入力インピーダンスが下がるとノイズレベルが下がります。ですので比較としては、「R1なし、R2 = 500kΩ」と「R1 = R2 = 1MΩ」および「R1なし、R2 = 1MΩ」と「R1 = R2 = 2MΩ」が妥当といえます。C1のリーク電流が関係するため、コンデンサの種類も変更してみます。スイッチは、ALPHA製で最もノイズが小さいものを選びました。
C1 フィルムコンデンサ 1μF
プルダウン抵抗による変化は見受けられません。
C1 電解コンデンサ 1μF(Rubycon YXJ)
フィルムコンデンサのときよりスイッチングノイズが大きくなっています。プルダウン抵抗がある方がノイズレベルが大きく見えます(原因は未調査)。
C1 電解コンデンサ 1μF + 並列抵抗10MΩ
リーク電流を増やすためにコンデンサと並列に抵抗を入れると、スイッチングノイズがさらに大きくなりました。プルダウン抵抗による変化はほぼありません。1MΩといった高い抵抗値のプルダウン抵抗を入れても、リーク電流が関係するノイズを減らすことはできないようです。
トゥルーバイパス配線のエフェクター実機でどうなるかを確認します。
スイッチの3回路のうち、各回路の切り替えタイミングのずれは毎回変わりますが、最大のずれは1.5msでした。切り替え時間は2ms程度なので、基本的に各回路のスイッチングノイズは重なっていると考えられます。
使用したエフェクターは、元々プルダウン抵抗が付いていないRAT2(ゲイン10倍 FILTER 0% VOLUME 100%)です。LEDの配線を外し、INPUTはグラウンドに接続してあります。あらかじめスイッチの各回路のタイミングを測定し、エフェクトオン時は出力側回路が先に動き、エフェクトオフ時は入力側回路が先に動くように選択しました。これにより、入力側のスイッチングノイズが出力されやすくなっているはずです。
プルダウン抵抗1MΩを追加しましたが、変化は見受けられません。入力側回路の影響はあまり大きくないと考えられます。
【結論】
プルダウン抵抗により、スイッチングノイズが低減される効果は確認できませんでした。この抵抗は基本的に省くことができるという認識で問題ないでしょう。ただ、あると安心感がありますし、「礼儀正しい」といえる(→ What are all those parts for??)のかもしれません。
■ その他のスイッチングノイズの要因
今回の測定でのスイッチングノイズは0.2Vpp程度でした。これより大きいスイッチングノイズがある場合、入力・出力のコンデンサやスイッチ自体の不良が疑われます。また、その他には以下のような要因もあります。
LEDによる電流変化
通常のトゥルーバイパス配線では、エフェクトオン時にLEDへの供給電流が増えます。回路によってはこのような電流の変動によりノイズが現れる場合があります。以下のページをご参照ください。
マイクロフォニックノイズ
スイッチの振動がケースや基板に伝わり、この振動がノイズ源となる場合があります。特に高誘電率系のセラミックコンデンサは振動を拾いやすいため、ハイゲインなエフェクターでは注意が必要です。











