PT2399 周辺コンデンサ検討

2021年08月07日 カテゴリー:実験等



デジタルディレイIC PT2399の7~12ピンに接続するコンデンサの役割について調べ、最適な値を検討しました。

PT2399のデータシートは内容が少ないため、以下を参考にしました。
ElectroSmash - PT2399 Analysis
M50195PデータシートPDF(PT2395互換品)
M50199PデータシートPDF(同種IC)



PT2399のアナログ-デジタル変換方式は、Adaptive Delta Modulation(ADM)と呼ばれるものです。ADMはM50199Pのデータシートで解説されているので、以下に転載しておきます。

ADM変復調
 ADMとは、Adaptive Delta Modulation の略で、適応デルタ変調とも呼ばれます。これは、1ビット符号によりアナログ-ディジタルの変換を行うもので、多ビットによるものより装置を簡略化・低コスト化できます。
 ADMの原理は、信号周波数に対して十分に高い周波数でサンプリングすると、すべての隣接サンプル値間で、その変化値はほとんどある一定値以内になり、その変化値が正であるか負であるかの情報のみ(1ビット)符号化します。(図1参照)これがDM(デルタ変調)と呼ばれる方式です。しかし、このままでは図1の様な急激な立ち上がり信号のときでは、一定値だけの加減では追随できず(傾斜過負荷歪)、また、図2の様に無信号では大きな雑音源(粒子性雑音)となることがわかります。
 そこで一定値(デルタ)の幅を信号の状況に応じて適応的に制御し、図1の様な急激な傾斜をもつ信号のときは、デルタ幅を大きく、また図2の様な無信号時ではデルタ幅を小さくし、歪・S/Nを改善したものが、ADM方式と呼ばれます。


 M50199Pでは電流制御回路(CC1)、外付のコンパレータ、オペアンプ(OP1)で構成したミラー積分器によりADM変調(A-D変換)を行い、電流制御回路(CC2)、オペアンプ(OP2)で構成したミラー積分器により、ADM復調(D-A変換)を行います。




PT2399について、M50199Pと同様に考えます。


CC0とCC1(Current Control:電流制御)に繋ぐコンデンサはADMのステップ幅の予測器に使われ、9~12ピンに繋ぐコンデンサはADMの積分器を構成するものと考えられます。

サンプリング周波数は、内部VCO(Voltage Controlled Oscillator)によって決定されます。VCOの発振周波数が低くなると、サンプリング間隔が長くなりディレイタイムが伸びます。それと同時に、量子化誤差が大きくなり音質が劣化します。



下図の最小限の回路で、コンデンサの静電容量値を変えた場合の特性等を測定します。入力レベルは-10dBu(約0.69Vp-p)です。
14_268_4pt2399s.png



【C9・C11】
積分器のコンデンサ容量を小さくすると、ADMのデルタ幅を大きくできるため波形追従能力が上がります。その半面、最小のデルタ幅も大きくなりノイズが増えると考えられます。→参考ページ:EEEGUIDE.COM - Delta Modulation(DM)



【C7・C8】
残念ながらADMの予測器というのがどのような回路かわかりません。容量値を変えた時の変化を確認してみます。



【まとめ】



結局のところデータシート記載の回路例で問題ないという結果になりました。しかしながら、PT2399を使ったエフェクターを設計したいという方にとっては少しは有用なデータだったのではないかと思います。